梦溪石先生インタビュー

2023/10/13

話題沸騰中の中華BLが日本上陸!欲望のままに動く“魔君”×美しく逞しい青年の大河ロマン 小説『千秋 1』
発売前からファン続出!超貴重な原作者インタビューを大公開

梦溪石(モンシーシー)先生インタビュー

――千秋を執筆するにあたり、物語の着想をどう広げていったのか、また、執筆中の思い出に残るエピソードを教えてください

善い者とそうでない者、または善い者たちとそうでない者たち、このように設定が分かれている物語は世の中にあふれるほどあり、その定義や解釈は常に、時代や視点の違いにより変化し続けています。しかし、もし、ひとりの善い者が傷つけられたとしたら、彼は最終的に逆の立場、つまり悪人となってしまうのでしょうか?
一方で、「天下の人に背くとも、天下の人を背かせはしない」と考え、人の性は悪なりと頑なに信じる悪人は、心に決めたことを押し通す善人を目の当たりにした時、どう感じるのでしょうか?ふたりの間にどんな火花が散らされるのでしょうか。善と悪は永遠に相容れないものなのか?こういった疑問が、『千秋』を執筆することになったきっかけです。

思い出に残るエピソード、そうですね。この作品はネットで連載していましたが、連載中はたくさんの批判的なコメントをいただきました。ほとんどが、沈嶠は善にこだわりすぎている、といったようなものでした。今振り返ってみても興味深く思います。なぜなら、そういうコメントは、人の心の動きの表れであり、私がより上手く登場人物の内面を掘り下げるのを手伝ってくれるからです。連載だからこそ得られた楽しさでした。

――沈嶠と晏無師はどんなキャラクターですか?

沈嶠はいい人ですね。ただ、彼の人のよさは単純に「善良」という二文字でまとめられるようなものではありません。世界から残酷な仕打ちを受けても、沈嶠は優しさを返します、真の悪意に出会っても、顧みずに打ちやることはしません。親しい者に裏切られ、友にも売られ、まさに八方ふさがり、四面楚歌の状態に追い込まれます。しかし、それでも彼は何度もどん底から這い上がり、成長して強くなる。最後は、その強さで多くの人の人生を変えられるようになるのです。

片や、晏無師はとても自意識が高く強い人です。独特の道徳観を持ち、誰かのためにそれを変えることはありません。欲するがまま動き、喜びも怒りも自分次第。他人の目には大悪党そのものに映るでしょう。物語の中でも、彼は邪道、悪役として登場します。ただ、いったい彼がどんな人なのか、に関しては、『千秋』を読み終わったみなさまご自身で、結論を導きだせると信じています。

――第1巻のこだわりはどのあたりでしょう?
第1巻で特に力を入れた点や好きな場面、執筆していて楽しかった場面などを教えてください。

私がいちばん好きな場面、情景は、物語のはじまりですね。万丈の断崖に、流れる川の水。ひとりの正道の掌教(門派を司る者)が戦いに敗れて崖から落ち、もうひとりの魔宗の主はその下を悠々と歩く。この場面を執筆している時、私の頭の中には同期するように映像が流れていました。交わる刀の光と剣の影、それは熾烈で素晴らしい光景でした。

――今、何かハマっていることはありますか?

仕事で楽しいと思うのは、生き生きとした登場人物をどんどん生みだすことです。彼らに完全で、波乱万丈な人生を与えるんです。そして、読者のみなさまが彼ら自身や彼らが経験する出来事を通して、理想の自分や未来の自分を見つけられるようにする、ですかね。

プライベートでハマっているのは、ゲーム、読書、それから旅行でしょうか。最近2年ぐらいですと、中国SF映画の『流転の地球2』とテレビドラマ版の『三体』にハマりましたが、すごくおすすめです。読者のみなさまも機会があった際にはぜひ。この2つの作品はどちらも中国のSF小説作家、劉慈欣先生の原作に基づいていますが、原作の素晴らしさは言うに及ばず、映画とドラマもとても見事で、観終わった後は頭の中に壮大な宇宙が広がりますよ。

――『千秋』のタイトルの意味について教えてください

『千秋』というタイトルは、文章の中では「千年におよぶ歳月」と直訳することができます。しかし、優雅で美しい中国語の創作においては、直訳ではその趣きが幾ばくか失われてしまいます。この言葉は、ただ時を表している、というだけではありません。過ぎ行く時の中の江湖や、武術の頂を追い求める人たちが、辿り着きたいと夢にまで見る境地をも含みもっています。

物語の中にこんな一節があります。 「千秋過ぎし後、どのような者が色褪せずに、記憶に留まり続けるのでしょうか」
人はみな、不朽不滅に生き永らえることを望んでいます。自分の武術の道が栄光の名のもと記されることを願うのです。
しかし、長江が滔々と東に流れゆくよう、結局一代の傑物は瞬く間にいなくなります。彼らが消えた後、残るのはただ「千秋」のみ。
どうぞ、じっくりとこの物語をお楽しみください。

翻訳・呉聖華先生コメント

私が『千秋』と出会ったのは、まだ中華BLにハマりたての頃でした。まずはラジオドラマから入り、衝撃的なスタートに度肝を抜かれて、秒速で原作を買いました。ハラハラドキドキしながら、夜遅くまで読んだ挙句、翌日寝坊したのは今でもいい思い出です。 美しく逞しく、優しくて芯が強い沈嶠。そんな彼に、「悪」とは何か、「この世」とは何かを“教えて“いく晏無師。真っ向に立つ2人がどう近づいていくのか。そして、沈嶠と晏無師がどのように変わっていくのか。また、2人の背後で複雑に渦巻く陰謀、華麗な戦いの数々も、見どころです。
ぜひ、梦溪石先生の作り上げた素晴らしい世界を、お楽しみください。

イラスト・高階佑先生コメント

「魔門の宗主」「魔君」晏無師、次に何するか想像がつきません。
何でそんなことするの?? と頭に「?」がいっぱいになりました…。
一巻の時点では(私には)内面が単純に推し量れないほど奥深いキャラだと思いました。
普通ならこうするよな、という凡人の常識が通用しないと言いますか、型破りでこんな攻め読んだことありません。中華BLの攻めはさすがです!(?)
沈嶠さま(正道、道門の掌教←一番強い人)は、冒頭から瀕死の重傷(あぁぁ…)。
大怪我で盲目の記憶喪失にもかかわらず、芯が強く、聡明で最高です。
読み出したら本当に止まらなくなり、一巻からものすごく面白くて梦溪石先生の物語に惹き込まれました。そしてここからどのようにふたりの関係が変わっていくのか、続きもとても楽しみです!

※本記事は、2023年6月26日(月)にBL情報サイト「ちるちる」に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。