千秋

天下一の道門「玄都山」の掌教・沈嶠(シェンチアオ)は、突厥(とっけつ)最強と謳われる男・昆邪(クンイエ)との戦いに負け、崖から落ちて瀕死の重傷を負う。気を失って倒れている沈嶠を助けたのは、偶然通りかかった晏無師(イエンウースー)。彼には自らが宗主を務める魔門・浣月宗(かんげつしゅう)に沈嶠を引き入れようという下心があった。意識を取り戻した沈嶠は、視力と記憶ばかりか掌教の地位までも失っていた。沈嶠は失った記憶を取り戻す旅に出るが、その美しい容姿と、卓抜した武功のため、魔門の者に追われたり、男寵にされそうになったりと試練が続く。ある夜、旅の途中で知り合った少年と町外れの古い寺に宿泊した沈嶠は、江湖において大変貴重な書物・『朱陽策(しゅようさく)』をめぐる争いに巻き込まれる。天下十大高手の雪庭(シュエティン)禅師に、妖艶な色気を振りまく白茸(バイロン)、人の顔を剥がしてその人物になりすます霍西京(フオシージン)まで、一筋縄ではいかない者たちが次々と現れる。そんな時、沈嶠は晏無師と再会する。
そして、晏無師と共に故郷の玄都山に向かった沈嶠は、自分が昆邪に敗れた原因を知る。衝撃を受ける沈嶠に晏無師は、「何だって望みを叶えてやる」と甘い言葉で誘うが、沈嶠は首を縦に振らなかった。だが、帰る場所を失った沈嶠は、晏無師と旅をすることを選ぶ。気まぐれな晏無師は、武功が弱っている沈嶠を冷たく突き放したかと思うと、見た者がふたりの仲を誤解するほど甲斐甲斐しく世話を焼く。
晏無師の狙いが分からぬまま旅を続け、長安で療養していた沈嶠は、名門世家の蘇家の寿宴に、晏無師の代理として行くことになった。だが、宴の席に突如やってきた段文鴦(ドワンウェンヤン)が、思いも掛けない話を始めたことにより、宴の席は一瞬にして戦いの場となってしまった。静観していた沈嶠だったが、ひょんなことから諍いに巻き込まれてしまう。回復する間もなく戦う沈嶠に「もはや道心を回復するのは不可能。だったら魔心を身に付けるべし」と晏無師は悪の道に誘い、昆邪との戦いで失くしたはずの「山河同悲剣」を差し出した。その上、晏無師は自分と共に宮殿へ入り、周帝に会ってほしいという。果たして晏無師の狙いは……。